悪魔と天使と快楽主義者

管理者:みやちん◆天使のザワメキ 悪魔のササヤキ

ヤエガシ

ヤエガシ・カツナリ



一章



「潜入任務へ向かう男」
ヒビヤ・スラムへの潜入任務へ向かう途中、ヤエガシ・カツナリ大尉はタヤマ隊の戦闘に遭遇し、ナカジマ曹長と共に手助けを行う。
ヤエガシは若い兵と辺りの哨戒に出た。
前方からはキャタピラの音が聞こえた時、ヤエガシは後方から若い兵を狙う国連兵の姿を認めた。
戦況を考えるか若い兵を救うか……。


「そこにある命を」
若い兵が狙われている事に気づいていなければ、死ぬ。
しかし撃てば戦車隊に気づかれる。
ヤエガシは、若い命が散っていくことに我慢がならなかった。
銃を撃ち、若い兵を救うことにしたが、それは戦車隊との正面衝突を意味した。


「戦車隊撃破」
ヤエガシの放った弾丸に気づき、襲いかかる戦車隊。ヤエガシは驚異的な戦闘能力で全て一人で撃破した。背後から驚きの目で見つめる若い兵士。しかしヤエガシに向けられたそれは自分をないがしろにされた非難の視線でもあった。
それでもいいとヤエガシは思う。
嫌われて皆の命が助かるならそれでいいと。


「最悪の結末」
過去にもヤエガシは部下を助けたいがために指揮官としてはあるまじき行為に出ていた。
部下を信頼するべきだ。あの若い兵はきっと後方の敵に気づいていて、おびきよせているに違いない。
しかし、若い兵は銃弾に倒れる。
ヤエガシは例えようのない暗い溜め息をつき敵兵を倒し、向かってくる戦車に備えた。


「繰り言」
躊躇ったばかりに、若い兵は命を落とした。
ヤエガシは己を呪いながら、怒りにまかせて戦車隊を撃破する。
しかし、敵を倒してもあの若い命は戻ってこない。
過去に何度も繰り返した同じ後悔。
ヤエガシは同じ繰り言を繰り返す自分に毒づく。


「ナカジマの配慮」
タヤマ隊を率いた戦闘を終え、野営するヤエガシとナカジマ。眠る若い兵たちを見て、また苦悩するヤエガシ。
ナカジマはそんなヤエガシをずっと見つめてきた。
しかし、心を楽にしてやることはできない。


「信頼の報酬」
哨戒に出るヤエガシ。しかしまたも同じような状況に出くわす。若い兵の背後から敵が狙っているのだ。撃てば敵部隊と正面衝突になる。大勢が死ぬかもしれない。
しかしヤエガシの苦悩をよそに若い兵は後方の敵を鮮やかに倒す。
安堵するヤエガシ。任せればいい。
これでいいのだと自分自身を納得させる。


「銃弾を躱す男」
カチドキ橋爆破任務に赴いていたヤエガシ・カツナリ大尉は、国連軍の罠にはまり爆薬を失っていた。
代りの爆薬が届くまでの間、国連軍を相手に熾烈な戦いを続けていた。
ヤエガシは、銃弾を躱すとも鬼神とも呼ばれる強さで、個人の戦闘能力としてはまさに群を抜いていた。


「苦悩する男」
人数にして30人。しかし歩兵ではヤエガシの相手ではなかった。まるでリトルリーグとプロ野球の戦いのようなものだ。
だがヤエガシの苦悩は尽きない。
若い命を守りたいと願いながら、敵の若い命を奪っていく。
ヤエガシには、それすらも苦痛だった。何十人もの相手を瞬時に倒す己の実力さえも。


「サカキ・サトルという若者
奇妙な縁と言っていい。ヤエガシは、違う日本からこの世界にやってきたサカキ・サトルと共に戦っていた。
野営先で会話をしながら、この若者を死なせたくないと考えていた。
それはいつもの思いだけではなく、別のものも混じった感情だった。


「盟友、ナカジマ・ゲンタ」
サカキを信頼し、無事に戦闘を終えたことを喜びながらも苦悩を抱えるヤエガシ。
廃ビルの中で野営をしながら、ヤエガシは己の器に疑問を感じていた。
そんなヤエガシをナカジマは部下としてずっと昔から支えてきた。


「爆破しろ!」
ようやく届いた新たな爆薬を橋に仕掛け、ヤエガシはカチドキ橋爆破を試みる。
しかし、なぜか爆発しない。
その間に敵の戦闘ヘリが追ってきていた。対空兵器はない。
今またここであの爆薬を失うわけにはいかない。ヤエガシはライフルを手にヘリに立ち向かったが……。


「落ちるヘリ、崩れる橋」
迫る攻撃ヘリの弱点である吸気口を、ヤエガシは見事にライフルで撃ち抜く。
機関部を破壊され爆音をあげるヘリ。
それにもう一つの爆音が重なる。橋が落ちたのだ。
安堵と同時に同じ悔恨を感じるヤエガシ。
多くの人間を死なせてしまった。しかし、生き残った者もいるのだ。


「帰るところがある人間」
ヤエガシは囮になるために飛び出したが、援護を命じたサカキもそれに倣った。
サカキには無理だと判断したヤエガシは戻そうとするが一瞬見失う。発見したとき、後方からサカキを狙う国連兵が見えた。
サカキは何としても死なせるわけにはいかない。ヤエガシは迷わず敵を撃ち倒す。


「死なせた仲間たち」
ヤエガシはどうしても見ていられなかった。後方から狙われる若い兵士。ヤエガシは引鉄を引き敵を倒した。
しかし、結果的にはそれが敵部隊の砲撃を招き、あっという間に仲間は壊滅状態になってしまう。
何とか生き延びながらも、ヤエガシはまたひとつ罪の意識を抱え込んだのだ。


「遠く離れた地に立つ我を」
襲いかかる国連軍の歩兵部隊を倒すべく、戦場を走り抜けるヤエガシ。しかしその戦闘能力には格段の差があった。
容易くと言っていいほどに敵を倒しながらヤエガシは思う。
自分が本当に遠くへ来てしまった事を。自分の人生がこんなにも数奇なものになってしまった事を。


「サカキ・サトルの才能
歩兵部隊の真っ只中に飛び込み、独特の戦い方で次々に敵兵を倒していくヤエガシ。あっという間に大勢は決したが、国連兵も全てが烏合の衆ではなく、確実にヤエガシに銃弾が迫る。
ギリギリのところで残った兵士を、サカキの銃弾が倒す。それはまぐれ当たりではなく、確実な才能を示すものだった。



二章



「ムサシノの森へ」
潜入任務へ向かうヤエガシは、ムサシノの森を歩いていた。
手元の弾薬が残り少なく、敵部隊とは遭遇したくないというのが理由だった。
しかし、そこでヤエガシは信じられないものを見る。
戦車隊。しかもそれは国連軍最強の戦車部隊ジャック・ザ・メイジャーの部隊だった。


「負傷兵、オカダ」
ヤエガシはムサシノの森を歩いていた。
そこで片足をなくした負傷兵、オカダと遭遇する。
重要な任務へ向かう途中だが、ヤエガシは見捨てることができずに、オカダを背負い歩き出す。己の情けなさに泣き出すオカダ。
何も言わずに歩き続けるヤエガシだったが、そこに敵部隊の影を見た。


「2台の戦車」
森の中、己の技量と策謀の全てを駆使して、ジャック隊と戦い続けるヤエガシ。
少ない武器を駆使して歩兵達を倒しはしたがさらに2台の戦車がヤエガシに迫っていた。
通用する武器は敵兵から奪ったドラゴン・ロケット一発のみ……。


「戦場での運」
2台のM1を一発のドラゴンで物の見事に撃破したヤエガシ。絶妙のタイミングがそれを成功させたのだが、運が良かったとヤエガシは思う。
もう一度やれと言われても無理だと。
戦場で運に頼るのは愚か者の仕業だが、戦場での運はしばしば命を救ってくれる。


神業
手製のナイフなどで、ジャック隊の歩兵達を次々と倒していくヤエガシ。残った戦車も、敵兵から奪ったドラゴン・ロケットで倒したが、まだ戦車が残っていた。
ヤエガシは正気の沙汰とは思えない攻撃に出る。戦車が主砲を撃つ直前、まだ砲身に弾があるその瞬間を狙って、炸裂弾を撃ち込まんとするが……。


奇跡の銃弾」
まだ砲身に弾があるその瞬間を狙って、炸裂弾を撃ち込む。
一か八かのヤエガシの銃弾はものの見事に砲身内部の弾に当たり、砲弾を誘爆させる。
ほっと一息をつくヤエガシ。だがまだ終わりではないとさらに気を引きしめる。


「決死の飛翔」
ジャック隊の戦車を葬り去るヤエガシだが、ジャックが操る指揮車は残っていた。
ヤエガシは虚を突き、撤退の道を選んだ。
崖の上に出たヤエガシは、一か八か、身を空へと投げ出した。
幸いにも命は無事だったが足を負傷し動けなくなる。自らをカムフラージュして、ヤエガシは救助を待つ。


アリスという名の少女
トコロザワの居住区を進むヤエガシは、死体の脇に佇む少女を発見する。
母を失い父もいないと知ったヤエガシは少女を連れていくことにする。
子供の扱いなど知らぬヤエガシだが、捨てては置けなかったのだ。母の死によるものか反応しないアリスに懸命に話しかけるヤエガシのその顔には笑みが浮かんでいた。


「三人の夜」
米国人ジャーナリスト、ノーマを加えたヤエガシとアリスの3人は、森で野営をする。
3人はやがて少しずつ打ち解けていく。
アリスを預けようとするヤエガシ、その代わりにUGへの取材を申し込むノーマ。
どんな運命の悪戯なのか、二人の思惑は一致する。
しかし、そこに敵の気配が……。


「小さな、アリス」
ヤエガシは、ほとんど反応を示さないアリスを連れ、森の中で野営をする。戦争の犠牲者となるのは、いつも弱者。
しかし、それを生み出しているのは自分なのだと苦悩するヤエガシ。
どうにかアリスの心をときほぐしたいとヤエガシは考える。


「ヒビヤ・スラムのミシェル
ヒビヤ・スラムに着いたヤエガシは早々にギンザ団と名乗るスラムのゴロツキに金品のほとんどを奪い取られる。
目立つことは避けなければならなかったからだ。
そこでヤエガシはミシェルと名乗る少女に出会った。


「ミシェルの家へ」
ミシェルは見ず知らずのヤエガシにありったけの好意を注ぎ、落ち着くまで家に来ればいいという。
ヤエガシはその好意を受け入れ、潜入先を決めるまで、世話になることにする。
しかし、ただでというわけにもいかず、考えるヤエガシだが……。


クラブセレスマリア
ヒビヤ・スラムに着いた早々、いざこざに巻き込まれヤエガシは負傷する。
油断から意識を失ってしまい、気がつくとクラブ・セレスを経営するマリアという女性の部屋に寝かされていた。
マリアは反国連軍であり、ヤエガシが国民軍であると見抜き、かくまってくれたのだ。


「その男の名はコウモト」
マリアの好意でコウモトたちのアジトにかくまってもらう事になったヤエガシ。
そこは一癖も二癖もある男たちの集まりだった。
しかし、義侠心に富み弱者の味方である彼らにヤエガシは好意を抱き、彼らのギンザ団アジト襲撃を手助けすることになる。


「そして再び戦場へ」
マリアの好意に甘え、しばらくはそこで休養をとらせてもらうことにしたヤエガシ。
マリアはまったく独自の考えでこの国を憂い自らの力で生き方を貫いているたくましくも美しい女性だった。
マリアの考え方に共感し、力を得、再びヤエガシはスラムの町へと戻っていった。


「彼らを守るためにも」
コウモトと“スワン・ソング”というバーに出かけたヤエガシは、そこで理想を語るコウモトに、若さゆえに熱く燃える確かな信念を見、そしてマリアに現実の強さを見た。
彼らのためにもこの世界を守らなければならない。決意を新たに、ヤエガシは任務へと戻っていった。



三章



「ジャックという男」
ヒビヤ・スラムでの潜入任務が続く中、雑踏の中でジャックに似た男を見かけヤエガシは思いにふける。ジャックと初めて出会ったのは、ヤエガシが今の名になって初めての任務「奉天領事館事件」だった。
あの事件ではヤエガシとジャックは互いの立場を超え、人命救助のために手を取りあったのだ。


奉天領事館事件」
ジャックとヤエガシが出会ったのは、戦場ではなかった。領事館に人質をとって立てこもったテロリスト達を撃退し、人質を救出するという作戦だった。
ヤエガシとジャックは各国の特殊部隊の精鋭と一致団結し、見事その作戦を成功させた。
ジャックとの奇妙な友情、信頼関係が生まれたのは、その時からだった。


「ウスリースクでの戦い」
かつて冬のウスリースクでヤエガシは、ジャックの戦車隊と遭遇した。
久しぶりの再会が戦車戦となり、ヤエガシはどこか血が騒ぐのを感じていた。
互いの知力と肉体を限界までぶつけあい、ヤエガシは最強と謳われるジャック隊の実力を肌で感じたのだった。


彼女の名はサユリ
潜入任務の日々の中、ヤエガシは雑踏でサユリに似た女性を見かける。
それは、ヤエガシの若き日の思い出の人であり、今もなお、心の奥に住み続ける永遠の女性だった。


「青年」
その当時、ヤエガシは国民軍兵士として戦うことに意義を見出し、自分がどのようにして生きるべきかを掴みかけた、青年だった。
図書館で出会ったサユリは学生で学者の卵。
かつてヤエガシが愛用していたマフラーは東北遠征の際に、サユリから贈られたものだったのだ。


「ヤエガシとなった日」
ヤマグチの命を受け、ヤエガシは特殊任務を帯びた兵士となった。
ヤエガシは、サユリにそれを告げることはできなかった。サユリとともに過ごした若き理想に燃えた青年兵は死んだ。
これからはヤエガシとして一人戦わなければならない。ヤエガシはサユリの幸福を祈り、一人姿を消した。


「二人の部下」
ヤエガシはかつての部下たちを思い出していた。ゴンドウとタンゲ。イナワシロ湖付近の偵察中にソ連軍と遭遇した時の事を。
どう戦うか。ヤエガシは部下を死なせたくない。しかし死ぬとわかっていても行わなければならない戦法もある。
死んでもいいと話すタンゲ。
ゴンドウとヤエガシの意見は対立していた。


「崩壊」
ヤエガシはイナワシロ湖付近でのソ連軍との戦闘に、先発隊を使わなかった。みすみす死ぬとわかる戦法をとりたくなかったのだ。
しかし結果的にはそれが裏目に出て、ソ連軍は壊滅させたものの、生き残ったのはヤエガシとゴンドウとタンゲだけだった。
全ては自分のミスだ。
ヤエガシは胸に刻みつけた。


「悔恨」
イナワシロ湖付近でのソ連軍との戦闘において、ヤエガシは誰かが犠牲となるような戦法をとらなかった。
しかし結果的にはそれがあだとなり、ヤエガシとゴンドウとタンゲ以外の仲間は戦死してしまう。結果的にソ連軍を壊滅はさせたものの、ヤエガシは己の甘さとふがいなさにただ頭を垂れるばかりだった。


「総司令官ヤマグチという男」
ヤエガシの最良の友人であり戦友であり、理解者、それがヤマグチ総司令官だった。
ヤマグチは類い稀な戦闘能力を持ちながらもその性格ゆえにどうしても非情になりきれないヤエガシのためを思い、特殊任務を遂行させるポストを与えた。
言うなれば、ヤマグチがヤエガシを作ったのだ。


「あの日々を」
同世代であるヤマグチとヤエガシは、共に訓練の日々を過ごした仲間だった。
慣れないヤエガシに戦いのイロハを教えたのもヤマグチだった。
今は立場は違い、考え方も違う。しかしこの国を守りたいという思いは同じだった。


「ヤエガシとしての日々」
鬼神とも恐れられるヤエガシの兵士としての基礎もまたヤマグチによってもたらされた。
新兵の頃にヤマグチに教えられた事は、今もヤエガシの奥底にある。そしてヤエガシは今はヤマグチの命により様々な裏の仕事をこなす。
たとえそれがどんなに不可解なものでも、この国のためになるのならと。


「作戦発動」
諜報部付の特殊機関『外事交渉局第四課』の精鋭二人、タカハシとカワハラを迎え、ヤエガシはヒビヤ・スラムで潜入の日々を過ごしていた。
永遠に続くかと思われた待機の日々も情報部所属のケイト・マイヤーからの通信で終わりを告げた。ヒビヤ・キャンプに侵入して座標コード表を入手する。


「精鋭達の夜」
ヒビヤ・キャンプに侵入して座標コード表を入手する。
それがヤエガシと外事交渉局第四課の精鋭タカハシとカワハラに与えられた作戦だった。
3人はそれぞれの思いを胸に技量の限りを尽くして、基地内に侵入。目的物を入手する。


「事前工作を遂行せよ」
ヒビヤ・スラムで潜入作戦中、ヤエガシと外事交渉局第四課の精鋭タカハシとカワハラは国連軍ヒビヤ通信局への事前潜入工作を命ぜられる。
HSミサイル阻止作戦は時間との勝負。
本番での障害を一つでも取り除いておきたいからだ。



四章



「盟友ジャックとの戦い」
HSミサイル阻止作戦を成功させたヤエガシは、その足で旭日昇天作戦に向かう。
しかしその作戦中、信じられないことにジャック・ザ・メイジャーに出会う。
ジャックは戦車に乗っていない。ショットガンを片手に歩いているのだ。
互いに笑みを交わす二人。
しかし、戦わなければならないのだ。


「その瞬間へ向かう時」
体勢を崩し地に背をつけたジャック。ヤエガシはすかさず銃口を突きつける。
だが、ジャックのガバメントもまたヤエガシを捉えていた。
その瞬間、二人の間の時間が止まる。
ヤエガシの脳裏に、これまでの数々のジャックとの戦いが蘇る。
そして……。


「友の死」
ヤエガシの放った弾丸は、ジャックの胸に赤黒い点を作った。しかしジャックの銃には既に弾がなかったのだ。
息絶えようとしているジャックを抱きかかえるヤエガシ。感謝しながら目を閉じるジャック。ヤエガシは、友を殺さなければならない戦争を恨んだ。
そして新たな決意を胸に、また歩き出した。


「好敵手、再び」
ヤエガシは気づいていた。自分に向けられたジャックの銃にはもう弾が残っていない。
ジャックの挑発にその事を指摘し、二人はどちらからともなく笑いだす。
そして、遠くから戦車の音が響いてきた。
再び最強の敵として戦車に乗り込むジャックと、それを迎え撃つヤエガシ。
ヤエガシは喜びさえ感じていた。


「満身創痍での戦い」
HSミサイルを満身創痍ながら阻止したヤエガシは、同じように重傷のタカハシとカワハラを連れ帰還の途にあった。しかし、そこに国連軍の部隊が現れる。
普通の状態なら動けないような重傷、しかも弾薬はほとんどない。
ヤエガシは生き残るために必死の戦いを続けた。


「限界を超えた男」
ミサイル阻止作戦で成功しながらも重傷のヤエガシは、現れた国連軍を相手に素手で戦っていた。
既に武器はなく、意識も失いかけていたが、本能だけがヤエガシを突き動かしていた。
敵を殲滅させタカハシとカワハラの下へ戻ったヤエガシだが、そこにまた、敵部隊の足音が聞こえてきた。


「レールキャノン
ヤエガシは若い兵士達を引き連れ穂高岳へ向かった。手には新型兵器のレールガン。そして穂高にはレールキャノン。
HSミサイルを迎撃するための最終兵器。
それを守るために、ヤエガシは戦っていた。
あまりにも攻撃力の高い異質な武器、レールガンに違和感を感じながらも。


歓喜の声」
レール・キャノン破壊に飛来した重爆撃機B−75を見事に迎撃し、ヤエガシはこの戦いを最後にヤハギに戻ろうと決意する。
そしてHSミサイルを迎撃するはずの、レールキャノンからのプラズマが空を翔けた。
迎撃は成功し、周囲は今までに見たこともない若い兵士たちの歓喜の声に包まれた。


「勇気」
HSミサイル迎撃作戦を成功させ、司令部に戻ったヤエガシは、そこでケイト・マイヤーと再会する。
溌刺とした笑顔を見たヤエガシは、戦うことでこの笑顔を見られるのならば、いくらでも戦おうと思う。
そして、長い間封印していたサユリへの思いをも解き放とうと決意する。勇気をもって。


「対空機関砲を動かせ」
レールキャノンを破壊しようとB−75爆撃機が迫っていた、
ヤエガシは司令部から、旧式の対空機関砲で迎撃してくれと命令を受ける。
骨董品と言ってもいいその対空機関砲の射座に座り、ヤエガシは照準器を覗き込んだ。


「かつての自分へ」
見事に対空機関砲で爆撃機を破壊したヤエガシ。周囲は喜びの声で包まれる。
そんな中、ヤエガシはこの作戦が成功したならば、もう一度ヤハギに戻ろうと決意していた。
自分本来の名前“ヤハギ・キョウスケ”に戻り、自分の人生を生きようと決める。


「彼の地の君を思う」
爆撃機を迎撃したヤエガシは、ふと思いにふける。サユリ、まだ若かったあの頃に愛し愛された人。特殊任務に就いた時にその幸せを祈り、背中を向けた人。サユリへの思いを新たにし、HSミサイルの迎撃を行う。
そして見事に迎撃をかなえ、喜びに湧く若い兵士たちを、ヤエガシは見つめた。


「旧時代の武器」
レールキャノンを破壊すべく、重爆撃機B−75が飛来するとの情報が入った。
ヤエガシはイシイ少尉より、対空機関砲で迎撃を行って欲しいとの命令を受ける。
あまりのその古さに憮然とするヤエガシだった。


未来への土台」
ヤエガシたちが守り抜いたレールキャノンが発射され、SHミサイルを見事撃破した。
喜びを爆発させる若き国民兵たち。
ヤエガシはそれを見つめ、この国を愛する若き兵士たちのためにも、彼らの未来の土台づくりのためにも、自分の命が尽きるまで戦い続ける気持ちを新たにする。


「消滅へのカウントダウン
ヒビヤ・スラムで潜入の日々を過ごすヤエガシ、そして外事四課の精鋭タカハシとカワハラの元にHSミサイルが発射されたと連絡が入る。
急ぎヒビヤ通信局に潜入し、妨害プログラムを流さなければこの国は壊滅する。
しかし、ヤエガシは通信局の内部に何か違和感を感じる……。


「最後の障害」
HSミサイルの妨害プログラムを流す事に成功はしたが、メインサーバーを破壊しなければ有効にならない事を知る。敵兵達の攻撃にあい、なおかつ強固に守られたメインサーバーは至近距離からグレネードを撃たなければ破壊できない。
ヤエガシ達は文字通り命を懸けて、それを実行。見事破壊に成功する。


「決死の脱出」
メインサーバーは破壊し、任務は成功した。
しかしヤエガシ、タカハシ、カワハラは重傷を負い、敵兵達の攻撃も激化する。
最後の力を振り絞り、脱出する3人。
奇跡的に脱出に成功した3人は、満身創痍ながら、トロッコの中で互いの無事を喜び、そしてまた次の任務への希望を口にする。


「行く手を阻む扉」
その時は迫っている。改めて気力の充実を図った直後ヒビヤ通信局への潜入開始の連絡が入る。
HSミサイルは発射された。妨害プログラムを流し自爆させなければならない。
潜入したがセンサーに発見され防護扉が作動してしまった。
破壊しなければ、前には進めないが……。


無駄にするな!」
センサーに連動して閉まっていく防護扉を破壊して進むヤエガシたち。しかし最後の扉を前にバリケードを築かれ、グレネードを使い切ってしまう。タカハシは爆薬を仕掛けその場で爆破させ重傷を負う。手当てをしようと駆け寄るヤエガシにカワハラは、タカハシが作った時間を無駄にするなと叫ぶ。


「犠牲」
最後の扉が爆破されず、タカハシは自らを犠牲にしてそれを爆破する。その犠牲を無駄にはできない。
ヤエガシは涙を飲んでカワハラと先を急ぐ。
目的の管制室に侵入し、ミサイル阻止のプログラムを流そうとするが、敵兵の攻撃は激しく、カワハラは身体中に被弾する。
どうするか……。


「すべての、終わり」
HSミサイルが、まさしく悪魔のような唸りをあげ、着弾する。
地下の日本国はもちろん、地上に住む国連軍さえも巻き込む無への閃光が、あたりを満たした……。