悪魔と天使と快楽主義者

管理者:みやちん◆天使のザワメキ 悪魔のササヤキ

タケウチ

タケウチ・ナルミ



一章



「その男は、狙撃手」
国民軍少尉タケウチ・ナルミは哨戒訓練を控えた新兵達と一緒に射撃訓練に臨んでいた。
本来ならそんなことはあり得ない。だが、新設された特務教官としての最終調整のため、特別教務として参加していたのだ。
天才の技術を学ぼうとする新兵達の眼差しをタケウチはそれなりに楽しんでいた。


「哨戒訓練中の戦闘」
新兵の哨戒訓練中に戦闘に遭遇したタケウチは、待機命令に歯がみするヤエガシ大尉の心中を察して、単独行動に出た。愛用のカスタム・ライフル<八咫烏(やたがらす)>を手に、狙撃に向かう。
スコープに捉えた兵士は妙なことにミサイルを持っていた。


「見慣れぬ武器
一人飛び出して友軍の援護で狙撃銃を構えたタケウチだったが、スコープの中に捉えた兵士の持つ武器に違和感を覚える。
見たこともない携行型のミサイル。
場にそぐわない武器に、目的はどこか別の場所にあるのかと推測するタケウチ。


「青い瞳の少女
哨戒訓練中に出くわした敵部隊との戦闘。
狙撃中にタケウチはふいに現れた青い瞳の少女に過去の幻を見る。
しかしそれは現実の少女だった。
支障となるものは排除しなければならない。
しかし殺す必要はない。
現実と幻の間で精神が揺れる。
タケウチは少女の首にナイフを滑らせた。


「落ちた銀の星」
敵との戦闘で一瞬正気を取り戻したものの、タケウチは再び現れた青い瞳の少女の姿に、理性を失った。襲い来る過去の幻と罪の意識はタケウチの精神を崩壊させ、敵陣の真っ只中へと突き進ませる。
無線の呼び出しに我に返ったタケウチは、おびただしい数の無残な国連兵たちの姿をそこに見た。


「幻影を振り払う」
タケウチは再び現れた青い瞳の少女に、また理性を失いかけるが、危ういところで踏みとどまる。
この少女は助けなければならない。
人間としての感情が、兵士としての意識が蘇る。現れたスドウの助けもあり、少女を殺さずにすんだ事に安堵の溜め息をついた。


「気配を消すということ」
森の中での接近戦となり、手ごわい相手にタケウチは己の技量の全てをつくして戦うことになる。
まるで空気のように、植物のように、森と同化し気配を消して敵の位置を探る。
ひとたび冷静になったタケウチ・ナルミにかなう者などいなかった。


「英雄の秘密
射撃訓練中に現れたオーストラリア大使オズワルド・コールマンと、サカキ・サトルの会話にまた偉大な祖父の名を聞くタケウチ。
この国の英雄、タケウチ・ケンジはしかし皆が思うような男ではなかった。
タケウチ・ナルミは、それを告げることはできない。口にすることは決して、ない。


「優しき鬼神ヤエガシ」
ヤエガシ大尉率いる新兵の哨戒訓練中、近場での戦闘を発見した。しかし本部からの命令は待機。
仲間を助けたいが、自分だけが飛び出すわけにもいかず歯がみするヤエガシ大尉。
タケウチは、この優しき鬼神のために、自分が動いてやろうとする。


「類い稀な力」
敵部隊に発見され散開する。新兵を率いるヤエガシ大尉は心配ない。タケウチは狙撃手として側面から援護する。
まだ未熟さを残しながらも戦場を駆け抜け、才能のきらめきを見せるサカキ・サトル。
タケウチはその天賦の際に驚き、精神面の強さを羨ましくも思い、苦笑する。


「若き、才能」
狙撃を終えたタケウチ。瞬間、背後に銃声が響き体勢を整えるが、サカキが止めた。
迷い込んだ少女を救おうとしたサカキだったが果たせず、しかし敵兵は確実に心臓を貫かれて死んでいた。
不意に現れた敵兵に同時に撃ち込んでも、一発で命を絶ったのはサカキの銃弾だった。


「いつか答えが出るのか」
戦闘を終え、地下に戻ったタケウチたちをコールマンが迎えた。
張りつめたタケウチに、コールマンはひとつの質問をする。
「戦場では自分の命と仲間の命、どちらが大切か?」
答えたタケウチにコールマンはいつかまた、同じ質問をしたいと微笑む。



二章



「血にまみれた少女の幻影」
CIA長官狙撃作戦に赴いたタケウチは、アダチ隊長の指揮下、スドウと共に狙撃準備を完了する。タケウチの過去を知るアダチはそれを忘れろと言う。
しかし、長官をスコープに捉えた時、青い瞳の少女の幻影がタケウチを襲う。
震える指。狙撃は失敗した。


「殺したのは、友」
タケウチは、既に正気と狂気の狭間にその精神を捕らえれられていた。
幼いころから叩き込まれた人を殺す術、周囲の期待、殺してしまった青い瞳の少女、そして同じ天才でありながら自分のような脆さを持たない友、スドウ。
タケウチは、唯一無二の友人に、銃弾を撃ち込んだ。


「生かしておけなかった」
かけがえのない友ゆえに、スドウを殺したタケウチは、帰還する。
迎えに来た同期であるミズノ少尉も、そしてアダチ大尉もタケウチのその行為を知る由もなく、タケウチの憔悴はただ友を亡くした落胆からだと推測する。
そしてタケウチは、また殺し合いへと赴く自分を感じていた。


「暗い決意」
スドウを殺してしまったタケウチは自分の内なる精神の深遠へと降りていく。
持って生まれた才ゆえに戦いの渦中に放り出された苦悩。生まれてしまった立場ゆえにあがくこともできない苦悩。
精神の崩壊をも感じさせる揺らぎの中で、タケウチはひとつの結論を見出す。
が、それはあまりにもいびつな結論だった。


「戦場で、ただ待つということ」
CIA長官狙撃ポイントである廃校の中、スドウと二人で狙撃準備を終えたタケウチは、激しくなる外の戦闘の喧騒を聞きながらひたすらその時を待っていた。
待つという事も狙撃手にとって重要な役割。
スドウは、少し以前にもこんな事があったと話し始める。


「その通信の意図は何だ」
イルマ基地襲撃作戦に参加したタケウチとスドウは、戦闘区域内の狙撃ポイントにいた。
そこに入った緊急音声通信の発信者は、亡命してきた天才少女ケイト・マイヤーだった。
父親であるブライアン・マイヤーが技術者としてイルマ基地内にいると言う。
そこで切られた通信の意図が読めずにタケウチは考える。


「背後からの敵部隊」
イルマ基地航空施設襲撃作戦の狙撃中、タケウチとスドウは背後から迫る敵の補給部隊を発見する。このままでは友軍が挟撃されてしまうと判断した二人は、そちらを片づけようとする。
装甲車を叩き、武装を無力化しようと考えたタケウチだったが、スドウはトラックを撃てと言う。


「スドウの力」
スドウの言葉に従い、何の変哲もないと判断したトラックを狙撃するタケウチ。
しかしトラックは考えられない誘爆を起こし炎上する。
スドウはトラックは燃料を積んでいたと見抜いていたのだ。タケウチは改めてスドウという兵士の優秀さに驚き、苦笑する。自分はまだ未熟だと。


「右腕の痛み」
タケウチはイルマ基地襲撃作戦の際、右腕を負傷していた。思ったよりも深かったその傷は澱のように体内に潜む。
スコープの中にCIA長官が姿を現し、タケウチは指に力を入れる。現れた幻影は、スドウの一言が吹き飛ばしてくれた。
しかしその時、右腕に激痛が走った。


「狙撃ポイントを選ぶということ」
緊急要請でイルマ基地航空施設襲撃作戦に参加したタケウチとスドウは、部隊と合流することもなしに単独で狙撃ポイントを決定。
すぐにでも狙撃を開始せよと命令を受ける。
メインの攻撃目標は、イルマ基地の管制システム。
どこを狙撃ポイントに選ぶべきか……。


「背中をまかせる人間」
狙撃中のスナイパーの背中は無防備になる。
その背中を守り任務の遂行を補佐するバディとして、タケウチはスドウに全幅の信頼を置いていた。
イルマ基地襲撃作戦の狙撃を開始してすぐ、スドウは騒がしい周りを片づけてくると、その場から消えた。


「レールガンでの3km狙撃」
スドウと組んだCIA長官狙撃作戦。タケウチはレールガンのスコープに、長官の姿を捉えた。失敗は許されない。
また浮かびあがる少女の幻影はスドウの声がかき消してくれた。
タケウチは慣れないレールガンに違和感を感じながらも、引鉄を引いた。


「99式狙撃銃での3km狙撃」
待ち続けたCIA長官の姿をスコープの中に捉える。瞬時に集中力が高まり、周りの音が遠くなる。
タケウチは浮かび上がる少女の幻影を感じていたが、スドウの声がそれを打ち消してくれた。
後は、慣れ親しんだ引鉄を絞るだけ。


「その人の死」
CIA長官狙撃を終えた後、合流地点に集まった仲間は半分になっていた。
そこに不意打ちの戦車が現れ、タケウチたちに襲いかかる。
崖の上からの一斉射撃にさらされるタケウチをアダチ隊長が庇い死んでいく。
慟哭するタケウチ。いつも幼い時から優しい手を差し伸べてくれた人だった。


「狙撃前の戦闘」
CIA長官狙撃ポイントとなる廃校前に国連軍が陣取っていた。
しかし、作戦を中止することはできない。
アダチ大尉が作戦の決行を指示し、タケウチは崖の上へ登り、戦車隊を狙撃することになるが……。


「針の穴を通す射撃」
崖の上に登り、敵戦車を狙うタケウチ。
狙うのは砲身と車体のジョイント部分。
ほんのわずかな弱点。
そこを高速連射で寸分の狂いもなく撃てば、破壊できる。
タケウチはスコープを覗き込み、見事にそれをやってのける。


「違う世界の兵器」
レールガンを持ち、タケウチはサカキと共に崖の上に陣取った。CIA長官の狙撃ポイントとなる廃校の前に展開する国連軍の戦車を狙撃する。
普通の銃ならばピンポイントで弱点を狙わなければ破壊できない戦車にレールガンはいとも容易く大穴を開ける。
その威力に冷たい汗が流れた。


「意志の力」
3km離れた廃校からのCIA長官狙撃。
タケウチはサカキをバディに、高速連射システムを備えた狙撃銃のスタンバイを終えていた。
やがてスコープに捉えた長官の姿。タケウチは襲いかかる青い瞳の少女の幻影を、意志の力で押さえつける。そして引鉄を……。


「小さなアルミ切片の威力」
3kmの狙撃。不可能を可能にするレールガンを構えたタケウチは、サカキをバディにして準備を終えていた。
超電導で撃ちだされるアルミ切片は距離も堅牢なガラスもまったく苦にしない。
タケウチはスコープの中にCIA長官、アルバート・ロビンスJr.の姿を捉えた……。


「順番通りの死」
CIA長官狙撃を終え、集まった仲間は半分に減っていた。
撤退を開始した直後、戦車が目の前に現れ、タケウチはサカキを庇い崖下へと飛ぶ。
上からの一斉射撃が襲いかかる。
タケウチを庇い死んでいったのは、幼い時から優しい手を差し伸べ続けてくれたアダチ大尉だった。



三章



「可能性の問題」
武装集団のアジト殲滅作戦に参加したタケウチは、ノガミ大尉から狙撃ではなくアタックチームに編入される。
トンネルから地上に出た場所にいた老人と子供を、スパイの可能性を恐れたタケウチは射殺する。
何の敵意も持っていなかった二人を殺したタケウチに隊員達は……。


「アジト潜入」
アジト殲滅作戦でバディを組んだナカムラが早々にトラップで吹き飛ばされ、タケウチは一人ビル内部に突入する。暗闇の中の戦闘。
敵か味方かを判断するのは難しいが、今のタケウチにはそんな事は関係なかった。
動くものは全て撃つ。
最後に敵を殲滅すれば結果は同じなのだ。


烙印
司令部は正気と狂気の狭間にいるタケウチの苦悩を見抜いていた。
銃を突きつけられ、タケウチは躊躇わずにノガミ大尉を撃つ。苦悶と悲しみに、ノガミの顔が歪む。タケウチをこうさせてしまったのは自分にも責任があると感じているのだ。
しかし、今のタケウチにはそれすらも感情を動かすものにはなりえなかった。


「安らかな眠り」
作戦中にタケウチが味方を撃ったなら、射殺しろ。ノガミ大尉に与えられた命令だった。
しかし、タケウチを撃ったのはテロリストの銃弾だった。
思わず手を差し伸べるノガミ。
ノガミもまた、タケウチを幼い頃から可愛がっていたのだ。死に向かったタケウチの顔は、なぜか微笑んでいた。


「アタックチームへ」
武装集団のアジト急襲作戦に集められたメンバーに狙撃手が二人いた。どちらかが本来の役割ではないアタックチームへ行くのだが、それを決めろとタケウチは言われる。
だが、横から口を出したスドウは二人でアタックチームへ行こうと言う。
渋々ながら、タケウチはそれを受け入れる。


「動けない」
武装集団のアジトの屋上からのスナイパーの攻撃で、後方に控える仲間が隠れていた廃屋を爆破された。
タケウチとスドウは、その姿を捕捉され、動くに動けない状況に陥ってしまう。


「走る二人」
状況を打破するためには、廃屋まで戻り、武器を探すしかない。
そう結論づけたタケウチとスドウは潜んでいた場所から走りだした。
囮となったスドウを心配しながら、廃屋に辿り着いたタケウチはすぐに武器を探すか仲間の状況を確認するかを考える……。


「死なせたくない人」
廃屋の瓦礫の中から80式携行用対戦車榴弾砲を見つけたタケウチは、武装集団のアジトのビルを攻撃、壊滅させた。
かろうじて生き残っていたノガミ大尉の怪我はひどく、自ら自分を置いていけとタケウチに言う。
しかし、幼い頃、可愛がってくれたノガミの優しさをタケウチは忘れていなかった。


「スドウ負傷」
スナイパーが武装集団のアジトの屋上に潜んでいた。
ノガミ大尉らが潜んでいた廃屋を爆破され、タケウチとスドウは突入を試みたが、姿を捕捉されスドウが負傷する。


プライド
武装集団のアジトの屋上から確実に捕捉しているスナイパーに対して、タケウチとスドウはなす術をなくしていた。
およそ狙撃には向かない武器と状況の中、スドウが捨て身の行動に出て、タケウチの腕とプライドをかけ、手持ちの94式で狙撃を試みる。


「無謀な成功」
廃屋の屋上に陣取るスナイパーを狙撃しなければスドウの命も危うくなる。タケウチはおよそ狙撃には不向きな94式で狙い、見事に撃退する。
スドウを抱え、トロッコに乗るタケウチ。
死んでいったノガミの事、他の仲間の事を思い、タケウチは戦うことのむなしさを痛感する。


「サトルの住む日本」
アジト急襲作戦を終え、たった一人で帰還するタケウチの脳裏に、サカキ・サトルの住む日本の状況が去来する。
戦争のない、平和な日々。
誰に聞かせるつもりもなく、タケウチはそっとその国のことをつぶやいた。


オールド・トウキョウで」
シルヴィッツ社社長フランク・ムーア暗殺を命令されたタケウチとスドウは、二人きりでオールド・トウキョウにあるムーア邸へと向かう。
途中、偽“向現”による中毒症状を呈し暴れ回る少年とその姉の騒ぎに出くわす。


「ムーア邸偵察」
オールド・トウキョウにしては珍しい深い森の中に建つフランク・ムーア邸。それを見下ろす小高い丘の上にタケウチとスドウは陣取っていた。
八咫烏>をスタンバイし、外出中のムーアが帰ってくるまで、邸宅の様子を観察していた。


地獄への誘い」
フランク・ムーアが黒塗りの高級車で帰宅するのを確認し、タケウチとスドウの間に緊張が走る。
幾重にもセキュリティがはりめぐらされ、私兵も存在するムーア邸。狙撃チャンスはほとんどないに等しい。
タケウチは暗視スコープを覗き込み、指に力を込めた。


「現れた女」
ほんの一瞬のチャンスを逃さずに撃ったタケウチの銃弾は確実にフランク・ムーアを捉え狙撃は成功した。
しかし、その帰り道、突然スドウが狙撃され倒れる。
狙撃したのは黒ずくめの女スナイパー。
何もできずに取り逃してしまい、タケウチは悔しさに身もだえする。



四章



病院にて」
病院を訪れたタケウチ。
どんな事だっていつかは変わっていく。その時に必要な人間というのが必ずいる。これからこの国に必要なのはタケウチ・ナルミだ。
全てを、あらゆる事を知ったうえで、なお戦い続ける、タケウチ・ナルミという天才兵士なんだ。
タケウチは、スドウの思いを知る。


「重い言葉」
ワカマツ・コンサートの警備に赴いたタケウチはスラムを巡回しながら、スドウの思いを考えていた。
必要な人間。果たして自分はその思いに応えられるのか。
この国から離れたいなどと考えている自分が本当に必要なのか。
そう考えながら、不審人物に声をかける。


「爆破の意味
突然、コンサート会場からほど離れたビルが爆破された。ワカマツ暗殺を企む武装集団の仕業には違いないが、意図が見えずにタケウチは考え込む。
なぜ、あんなところを爆破したのか。暗殺のためか?だとしたらどういう手段で暗殺をするために、あそこを爆破したのか……?


「オレの名を呼んでみろ」
廃ビルを爆破し、暗殺の意図を見抜いたタケウチは、照明塔に登り、三日月ビルからワカマツを狙撃しようと構える女スナイパーと対峙した。
守らなくてはいけないものを守る。
迷いを振りきったタケウチにかなう人間などいなかった。タケウチは、強風と夜間という悪条件をものともせずに、相手を葬り去る。


「その名を知る者」
爆破された廃ビルの屋上から女スナイパーをものの見事に狙撃したタケウチは、かけつけた仲間から、相手が鷹の彫刻が刻まれたモーゼル98カービンを使っていた事を知らされる。
記憶の底に眠るその銃と彫刻に、タケウチはひとつ溜め息をつき、しかし自分のいた場所へと戻っていく。


「呼び覚まされる記憶」
タケウチは爆破されたビルの屋上から三日月ビルの屋上に立つ女スナイパーを捉えた。
同時に、持つ銃が鷹の彫刻が施された古いモーゼルだとも知る。それはタケウチの記憶を呼び覚まし、胸の銀の星のあたりを震わせた。
しかし、タケウチは躊躇いながらも、引鉄を引いた。女スナイパーが崩れ落ちた。


「守りきったもの」
爆破された廃ビルの屋上から、三日月ビルの屋上に立つスナイパーを狙うタケウチ。
爆破の煙がおさまるのを待たずに狙撃し、倒す。
女スナイパーの持っていた銃が、古い記憶を呼び覚ますが確かめる術はない。風に乗って聞こえてくるワカマツの曲に、タケウチは全てを守りきることを、スドウに誓う。


「友の眠りのために」
ワカマツ・コンサートの警備に赴いていたタケウチは、スドウを殺した女スナイパーへの復讐を胸に秘めていた。同じように、胸に秘めた思いはあった。
隠し続けた銀星章。それは祖父から父、そして自分へと繋がるいわばこの国への裏切りの象徴だった。この国から離れていきたい。
その願いの象徴だった。


「スラムの影」
タケウチはスラムの路上での小競り合いに巻き込まれた少女に声をかける。そして、どこからか聞こえてきた“黒い服の女”という言葉に反応した。
振り返るとそこにはただのスラムの住人とは思えない雰囲気を持った二人の男がいた。
ピアスだらけの男と、逞しい体つきの老人。


「失われた友へ」
何事もなくコンサートは進み、タケウチはスドウを殺した女スナイパーが現れないことに苛立ちを感じていた。
自分は何のためにここにいるのか。ワカマツを守るためにか。なんのために守るのか。
失ってしまった友への思いを秘めて、タケウチは待ち続けた。


「待っていた女」
三日月ビルに不審な黒ずくめの女がいるとの報告を受け、タケウチはノガミ大尉の配慮で単身乗り込む事になる。
屋上で拳銃での戦闘になったタケウチは肩と足に銃弾を受ける。
しかしその不利を逆に利用するために、物陰に隠れ、じっと反撃のチャンスを窺う。


「エリナ・ホークへ」
女スナイパー、エリナ・ホークの名を、タケウチはずっと昔から知っていた。祖父の代から続くいわば因縁ともいうべきものだった。
だがそれは誤解の上に成り立った復讐だ。
タケウチは、それを告げずに幕を引くことにする。
残された者は、去っていった者の思いを胸に生きていけばいいと。


ここではない、どこかへ
エリナ・ホークは、かつてタケウチの祖父と決闘を行い死んでいった兵士の娘だった。
タケウチはそれを祖父の日記で読み、全てを知っていた。
復讐するために今まで生きていたエリナには酷な真実になるが、全ては誤解だったのだ。
タケウチは、何もかもを捨てる決意をする。


「誰かが撃った弾丸」
ワカマツ・コンサートの警備中、タケウチはスラムのパトロールに出るが、どうにも嫌な予感を感じていた。
誰かにつけられているような感覚。
その予感は的中する。突然銃声が聞こえ、肩口に衝撃が走ったのだ。


「生きていた女」
タケウチを撃ったのは、あの武装集団のアジトを急襲した際の女スナイパーだった。生きていたのだ。そしてタケウチを誘うように三日月ビルへと逃げ込んでいく。
すかさず攻撃するが、弾丸が当たっているのに女は倒れなかった。
そして血痕を残して動きながら。タケウチの名を呼んでいた。


悪夢の終わり」
撃たれても撃たれても死なない黒衣の女。
それは薬によって生かされ続けるおぞましい実験体ともいうべき敵だった。
策略によって捕らえられ、なす術もなく同じ薬を打たれるタケウチ。
やがて副作用で女は死に至り、タケウチは駆けつけたミズノ少尉に救出される。


「全ての真実」
エリナ・ホークはひとつの誤解のためにタケウチを仇と狙い続けた女スナイパーだった。
タケウチは祖父の日記からそのことを知っていた。エリナに全てを伝え、隠し続けたエリナの父の銀星章を、返す。
そしてタケウチは、そう望んだエリナの命を絶ち、駆けつけたミズノとともに、再び戦場へと戻っていった。